追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 返す言葉はたしなめるような調子になった。
 興奮気味に喋る田口さんのミーハーなオーラを浴び、逆に冷静になる。ひとたび冷静になったら、今度は急に怖くなった。

 あの動画を私に見せるため、彼女は鵜ノ崎さんのマンションから私を尾行していたのだろうか。でなければ、人の行き交う駅の中、ピンポイントで私に声をかけるなんてできる気がしない。
 だいたい、あの動画だって一体誰が撮影したのか。

 レミと連絡先を交換したことは、田口さんを含めた他の誰にも口外すべきではない。スマホを握り締め、私は改めて気を引き締める。

 朝のレミは服装もメイクも抑えめだった。
 事実、私はあの場で彼女がレミだとは気づけなかった。そして、メッセージアプリのホーム画面の写真もまた、彼女の仕事モードの顔には見えない。素顔に近いのではないかと思う。
 鵜ノ崎さんを狙っている彼女が、私へ嫌がらせをしたがっているのかもしれない。あるいは、アプリのアカウントも込みでレミを装った、別人によるなりすましの可能性だってまだある。

 でも。
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