追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「どうしました?」
「い、いえ。なんでも」

 にこやかな田口さんに慌てて手を振りながら、喉の奥で悲鳴を押し殺す。
 どういうことだ。鵜ノ崎さんが縁談を白紙にした相手がレミなら、やはり、すべては結婚が駄目になったレミによる腹いせという話になりはしないか。

 いや、でも、と心の中で首を横に振る。

 それにしては手が込みすぎている。鵜ノ崎さん本人を訪ねるならまだしも、敵視するべき私に自ら声をかける理由としては弱い。
 しかも話を聞く限り、レミはかなりのセレブだ。本人が自らこんなことをしでかすのは不自然だ。

「実はインスタもフォローしてるんですよ、僕」

 困惑を極める私の隣で、田口さんは引き続き、呑気な声をあげてスマホを操作する。
 画面をスワイプする彼が次いで開いたのは、レミのインスタだった。

「レミちゃんってずっとブロンドとかピンクとか派手な髪だったんですけど、最近黒髪にイメチェンしたんです。これがまためっちゃ似合ってるんですよね~」
「……そう、なんですか」
「『柊木さんってレミちゃんに似てる』って前に言ったじゃないですか、僕。レミちゃんが黒髪にする前は全然気づかなかったんですよね、やっぱ似てますよ~」
「あ、はい、ありがとうございます……」
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