追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 アプリのアイコンに使われているレミの顔貌を、改めてじっと見つめる。

『〝柊木さんってレミちゃんに似てる〟って前に言ったじゃないですか、僕』

 田口さんの声が脳裏をよぎる。
 私自身は言うほど似ていないと思っていた。田口さんの発言は八割がた、深い意味を持たないリップサービスの類だ、と。

 ただ、メッセージアプリのレミの顔写真は、確かに私に似ている気がする。

 メイクや髪型だけでここまで雰囲気を変えられるものなのか、と改めて驚かされる。
 巷を賑わせているブランド化粧品のCMを眺めているときや、街頭の広告を見ているときなどに、似ていると感じたことは一度もないのに。

 田口さんは、モデルとして活動するレミの顔しか知らない。
 そんな彼が、たとえリップサービスだとしても『似ている』と判断するだけの共通の特徴が、私とレミの間には本当にあるのかもしれない。

 カラン、とドアベルの鳴る音が響き、私ははっと顔を上げる。

「お待たせしました、アユカさん」

 目を向けた先に佇む女性と、視線がかち合った。
 一瞬誰だか分からず、ああ、レミだ、と一拍置いてから気づく。彼女と待ち合わせをしたからここでこうして待っていたにもかかわらず、一拍置いてからでなければ気づけなかった。
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