追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 駅で遭遇した朝とは違い、レミさんは肩下から髪を巻いていて、艶やかな黒髪につい見入ってしまう。
 グレーのニットワンピースにワインレッドのストール、足元は飾り気のない黒のブーツ。アクセサリーは耳元のピアスのみで、朝と趣向こそ変わっているものの、全体的にシンプルな装いだ。

 相貌そのものも含め、広告やSNSで見る彼女とは雰囲気が違う。
 メッセージアプリのほうの顔、つまりは私に似せたほうの顔で、今、彼女はこうして私の前に現れた。

「……こんにちは」
「こんにちは。来てくれてありがとうございます、失礼しますね」

 頬を染め、なぜか恥ずかしそうに微笑んだレミさんは、丁寧に断りを入れてから私の対面に腰を下ろした。
 緊張気味に見えなくもないけれど、それよりも嬉しそうな印象を強く受ける。違和感は増していく一方だ。

「アユカさんはなにか食べなくて大丈夫です?」
「あ……と、飲み物だけで結構です」
「ごめんなさい、あたしだけ頼んじゃってもいいですか? お腹すいてて」
「ええ。もちろん」

 呼び出したスタッフへ、軽妙な口ぶりでドリンクと軽食を注文するレミさんを、対面から不躾なほどじっと見つめる。

 注文を終えたレミさんは、ぺこ、と頭を下げてみせた。
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