追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「結局断られちゃったみたいです。一週間くらい経ってからかな、結婚を前提に交際してる人がいるとかなんとか、今までにない明確な理由だったそうで」

 あ、と声が漏れる。
 時期的に、私が鵜ノ崎さんの恋人係として彼の実家を訪問した頃だ。

「正直、あたしは相手が鵜ノ崎の息子でもそうでなくても別に構いませんでした。お祖母ちゃんは縁談を進めたがってたけど、まぁ仕方ないかって感じで……でも、鵜ノ崎の〝恋人〟の名前を聞いて気が変わったんです」

 す、とレミさんの双眸が細められ、息が詰まる。

「最初に〝柊木〟って名字を聞いて、下の名前も無理やり聞き出しちゃいました」
「無理、やり、って」
「アユカさんだって分かったら止まれなくなっちゃった。昔のあたしじゃ無理だったけど、今のあたしならちゃんとアユカさんの隣に並べるんじゃないかって」

 レミさんの態度に、急速に不穏な雰囲気が滲む。
 笑っていない目。低くなった声。砕けた口調。執着の気配を感じ取り、ぞく、と背筋が強張った。

「やっと見つけたの。こんな形でなんて不本意だけど、見つけられて嬉しかった」
「……レミ、さん」
「ねえ、ふたりってまだ付き合ってるだけなんですよね?」
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