追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「レミさん、待ってくださ……」
「あたし、アユカさんと誰か他の男が並んでるところなんか見たくない。あたしのアユカさんは誰にも汚させたくない、そのためだったらあたしが代わりになれる!」

 ぎり、と奥歯を噛み締める音が聞こえてくる。
 その瞬間、頭をよぎったばかりの違和感が確信に変わった。レミさんは、私のために怒っているのではない。

 彼女は、長い月日をかけて育てた自分自身の〝憧れ〟を守るために怒っている。

「分かって。アユカさんのためなの、あたしのこと信じてほし……」
「嫌です」

 遮るように口を滑ったのは、ひどく低い、そして短い否定だった。
 言葉を止めたレミさんが、見るからに息を詰めた。自分でもこんなに低い声を出せるものなんだな、と私自身も内心で驚いていた。

「……え?」
「私はあの人のこと、誰になにを言われても諦めません」

 目を見て告げる。眩暈がしてくるほどじっと、レミさんの瞳を凝視する。
 今思えば、姫田さんにも、こうやって伝えたいことをはっきり伝えれば良かったのかもしれない。やや場違いな感想が浮かんでから、違う、これって今の私だから言えるんだ、と強く思う。
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