追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 レミさんは完全に固まっていた。
 大きく見開かれた目が、信じられないとばかりに対面の私を射抜いている。けれど私は怯まなかった。

 怯んでなんて、いられなかった。

「ごめんなさい。憧れ、壊してしまって」

 目を伏せることなく告げると、途端にレミさんの目が泳ぎ出す。

「私、レミさんが思うほど綺麗でもなんでもないです。あなたに憧れられるような人間じゃ全然なくて」
「違うっ、そんなわけ……!」
「私が男の人を振ってるところ、見たって言いましたよね。はっきり思い出せないんですけど、そのとき、私は単純に自分が傷つきたくなかったからそうしたんだと思います」

 地獄のような〝公開処刑〟以降、私は誰とも交際しなかった。あの二年後に、まさか憧れという視点で当時の私を見ていた人がいたとは、と驚きを隠せない。
 当時の私は、ひとりで生きていきたいとか格好良くいたいとか強くありたいとか、レミさんが私に見出したようなそういうことは一切考えていなかった。私が傷つきたくないから誰とも付き合いたくなかっただけだ。

 自分から追う恋はもうこりごりだった。
 ただ、それだけ。
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