追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「……え?」
「アユカさん、さっきはあんなに鋭い目してたのに、その男が相手だとそんな顔しちゃうんだ」

 独り言じみた声で呟いた後、ふっと全身の力が抜けたように、レミさんは膝を崩してソファに沈み込んだ。

「はぁ……最悪。真面目にあたしのこと選びなよクソ男、アユカさんに触んないで」
「嫌だ。あんたのやり方じゃ柊木が傷つくだけだ、柊木は俺らとは違う」

 普通の家庭で育った人なんだぞ、とひと息に告げる鵜ノ崎さんの声は苦々しい。
 その言葉を聞きながら、ああそうか、と急速に腑に落ちる。

『あたしたちみたいな人間って、家の都合で結婚するなんて当たり前なんですよ』

 レミさんも言っていた。
 そういう結婚の選択肢が当たり前にある家に生まれた者同士という意味で、ふたりはある種の同志なのだ。

「ほんとムカつく。なんなの」

 露骨な溜息を零したレミさんの目元に、大粒の雫が確かに見えた。
 それがぼとりと落ちるさまをただ黙って眺めていることはできず、私はレミさんに手を差し伸べる。

「レミさん。あの動画って、誰か他の方が撮ったんですか」
「……はい。馴染みのカメラマンに頼みました」

 カメラマン。
 喉が鈍く痛む。
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