追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 つまり、彼女の端末に入っているデータを今目の前で削除してもらったとしても、元のデータが別にある以上は、今後もレミさんの気持ちひとつでいつでも公開できてしまう。

「元データごと消してほしい、って話ですよね」
「はい」
「嫌だって言ったら?」

 意地の悪い提案が続き、息を詰める。
 先ほど鵜ノ崎さんを挑発していたときと同じ声色だ。レミさんが私に対してその口調で話すのは初めてだった。最後の悪あがきという印象が、声からも、口端を片側だけ吊り上げた挑発めいた表情からも、嫌でも伝わってくる。

「……そうしなければ気持ちが落ち着かないなら、仕方ないです。ただ」

 言葉を区切り、私は足を踏み出した。
 さっきまで座っていたソファの席を目指し、一歩、また一歩と進んでいくたび、レミさんの勝ち気そうな顔に浮かぶ困惑の色が強くなる。

 背後で鵜ノ崎さんが心配していると分かっていて、あえて後ろは振り返らなかった。

「レミさんがあの動画をご自分という体でネットに上げるなら、私も声をあげます。私と、鵜ノ崎さんの名誉のためにも」
「あ……」
「動画に映っているのがレミさんではないときちんと表明します。もしその動画が望まない形で広まったとしても、私の気持ちは変わらないです」

 ――あなたの憧れは、もう元には戻らないと思う。
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