追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 艶めいた唇が眼前に迫る。
 混乱の中、なにをされそうになっているのか予想がついて、けれどまだ頭のどこかで〝まさか〟という気持ちが大きくて、そのせいで身体がまともに動かない。

 レミさんの唇が、間違いなく私の唇を目指していると確信した、その瞬間。
 ぐい、と今度は後ろから強く腕を引っ張られた。

「っ、なにしてんだお前!」

 鵜ノ崎さんの鋭い声が、すぐ傍から耳を刺す。
 お前、と呼ばれたのが私ではなくレミさんだと、少し考えれば簡単に分かることすらなかなか呑み込めない。

「あ……あわわ」

 鵜ノ崎さんの腕に、後ろからきつく抱き留められながら、頭がようやく事態を理解する。口からはまともな言葉が出ず、思いきり間抜けな声が漏れただけだ。
 女性にキスされそうになったのは初めてだ。もう少しで触れそうだった、私よりもずっとやわらかそうなレミさんの唇――腰を抱き寄せられた感触も蘇り、その頃になってから頬が燃えるように熱くなる。

 私を引き剥がされたレミさんは、ソファに座ったまま、挑発的な目で鵜ノ崎さんを見ていた。
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