追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に溺愛されています
「好きです。私、鵜ノ崎さんが、前から、ずっと」

 喉から声が滑った途端、悲しくもつらくもないのに涙が溢れた。
 感情が昂ぶっている。熱が出たときみたいに全身の至るところが熱くて、くらくらする。

「言えないままじゃ狡いって、ちゃんと分かってたのに、私、どうしても言えなくて」
「……柊木」

 受け取るばかりでは駄目だと、申し訳ないと、ずっと感じていた。
 それでもやっぱり怖くて言えなかった。

 けれど今は、〝怖い〟よりも勝っている感情がある。

「本当に追いかけても大丈夫ですか、……私っ、すっごくしつこいと思います、鵜ノ崎さんだっていつか面倒に感じ……」

 感じる日がくるかも、と続けたかったのにできなかった。
 声ごと奪うように再び唇を塞がれる。口の中に閉じ込められた残りの言葉は、甘いキスにあっさりと溶かされた。

「前から言おうと思ってたけど」
「……え?」
「困るよ。カスの元彼どもと横一列に並ばされても」

 唇と唇の間に開いたわずかな隙間から囁かれ、カス、と鸚鵡返しする。
 瞬間、胸の奥で長く私を捕らえ続けていたものが崩れた。ガラガラと崩れて、跡形もなく綺麗に消えてなくなって――返事をしたいのに、零れるのは声ではなく涙ばかりになる。
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