追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に溺愛されています
「逆に柊木は俺を面倒だって思ってないのか」
「え?」
「現状、俺も相当しつこく追ってるけど」

 涙を拭われてから訊かれ、間の抜けた声をあげたきり固まってしまう。
 そんなことを訊かれるとは想定していなくて、すぐには返事が浮かばなかった。傍で私を見つめる熱っぽい瞳に囚われながら、なんとか口を動かす。

「お、思ってない、思ってないです」
「じゃあ解決だろ」
「は……」
「しつこい者同士、追いかけ合って生きてけばそれで良くないか?」

 今度こそ絶句した。
 開いたまま固まった口を閉じる暇もなく、また唇を重ねられ、それ以上は余計なことなんてなにも考えられなくなる。

 今そんなことを言われたら、私はもっと駄目になる。
 溺れて溺れて、しまいには溺れることを恐れられなくなるだろう。

 でもそれは、追う恋が実った私にとって、この上ない幸せなのかもしれない。

「好きってもう一回言って」
「す、好きです。私、鵜ノ崎さんが、」
「もっと」

 目を見ていられない。
 視線を逸らし、もう一度伝えるために口を開こうとする。けれど間を置かず、私の顎には鵜ノ崎さんの指が触れ、強引に向き直らされてしまう。
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