追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に溺愛されています
 息もつけないくらいの熱い視線に射抜かれた私が、なんとか口を開いたときには、私の唇は再び彼のそれに甘く塞がれていた。

 言おうとしたのに言えなくなった告白ごと、蕩けるようなキスに溶かされる。

 角度を変えて幾度も幾度も啄まれた唇は、ほどなく感覚が鈍り始め、それどころかまともに立っていられなくなる。
 腰が砕ける、とはこのことを指すのだと思う。同じキスを前にもされた。あのときも身体の芯が溶けてしまったみたいに力が入らなくなって、それでも鵜ノ崎さんはキスをやめなかった。今も……いや、違う。

 今夜の口づけは、今までよりもさらに執着じみている。
 支えなしでは立っていられず、堪らず鵜ノ崎さんの胸元にしなだれかかったそのとき、不意に唇が離れた。彼の唇は、そのまま私の耳元へ動いていく。

「これからは」
「は、……ぇ?」
「俺に見えないところで危ないことはしないでほしい」

 祈るような声で囁かれ、濃厚な口づけに呑まれて霞む頭を無理に働かせながら、私は返事を絞り出す。

「す、すみません。危ないって、あまり思ってなくて、……レミさん、女の人ですし」

 舌足らずな喋り方になったことを恥ずかしく思う。
 それでもなんとか伝えると、鵜ノ崎さんは苦々しい表情で首を横に振ってみせた。
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