追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 例えば、この人に恋心を抱くなんてもってのほか。
 恋になったら終わりだ。ひとたびそんな事態になれば、私の平穏な日々はあっさり露と掻き消える。

 恋をすれば、私は間違いなく相手を追いかけ始めるだろう。
 私はそういう恋しかしてこなかったし、これからもきっとそういう恋しかできない。

 そして、追う私は絶対に相手から突き放される。
 ぞっとする。それだけは、私自身のためにも絶対に避けなければ。

「すみません本当に申し訳ないんですがやっぱり吐きそうな気がしてきました」
「うお……あとちょっと頑張れ、もうすぐ部屋だ」

 珍しく動揺を滲ませた声が聞こえてきて、会社のトップに酔っ払いの世話をさせていることをひたすら申し訳なく思いながらエレベーターを降りる。
 エレベーターの揺れがダイレクトに効いてしまった私の、ふらふらと空を泳ぐ手を、鵜ノ崎さんは振り払わなかった。部屋の前までなんとか歩いていく廊下の途中、顔を覗き込まれて微笑まれ、ひどい酔いを一瞬忘れるほどふっと頭が冴える。
< 24 / 51 >

この作品をシェア

pagetop