追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
私たちが名前で呼び合うのは愛し合う最中くらいだから、当初こそ呼ぶたびに顔が熱くなっていたものの、車中で三時間も続けていればまあまあ照れは消えてきた。
とはいえ、そもそも呼び慣れないから、私はもう何回も呼び直している。
「俺はさ、追いかけてるときに好きな人の周りが気になりすぎるみたいだ。同じ〝追う〟でも性格って出るもんだな」
ぽんと頭を撫でられ、ふふ、と笑いが零れる。
不思議だ。傷ついてすべての恋を諦めていた私が、あれほど恐れていた〝追う恋〟を幸せだと感じている。私にこんな未来が訪れるなんて、と胸がいっぱいになる。
感慨に呑み込まれる前にと、私は、頭に乗った彼の手を取ってハンドルへ戻させた。
「危ないですよ、片手運転」
「あっはい、気をつける」
今度は、ふたり分の笑い声が重なった。
実家に繋がる道、窓から覗く景色はどこまでも眩しい。白い雲が漂う空も、連なる山の緑も、すべてが光り輝いて見える。
私たちを祝福するかのような鮮やかなきらめきに包まれながら、幸せだけでできあがった涙がじわりと滲んだ。
〈了〉
とはいえ、そもそも呼び慣れないから、私はもう何回も呼び直している。
「俺はさ、追いかけてるときに好きな人の周りが気になりすぎるみたいだ。同じ〝追う〟でも性格って出るもんだな」
ぽんと頭を撫でられ、ふふ、と笑いが零れる。
不思議だ。傷ついてすべての恋を諦めていた私が、あれほど恐れていた〝追う恋〟を幸せだと感じている。私にこんな未来が訪れるなんて、と胸がいっぱいになる。
感慨に呑み込まれる前にと、私は、頭に乗った彼の手を取ってハンドルへ戻させた。
「危ないですよ、片手運転」
「あっはい、気をつける」
今度は、ふたり分の笑い声が重なった。
実家に繋がる道、窓から覗く景色はどこまでも眩しい。白い雲が漂う空も、連なる山の緑も、すべてが光り輝いて見える。
私たちを祝福するかのような鮮やかなきらめきに包まれながら、幸せだけでできあがった涙がじわりと滲んだ。
〈了〉