独占欲に火がついた御曹司が溺愛猛追で鉄壁ガードを崩してきます
「私、ずっと地元から離れてたでしょ? 結婚したからって多分なにも変わらないのにそんな泣く?」

 式場のスタッフからメイクを施されているさなか、ついつい母に尋ねてしまう。
 傍のソファに腰を下ろしてメイクの様子を眺めていた母は、途端にケラケラと愉快そうに笑い出した。

「寂しいのよ。心のどこかで、いずれは帰ってくるかもって期待してたみたいだし」

 言いながら、母も少し寂しそうに眉尻を下げる。
 母は、私が電話でお見合いを断った日、『あの子にはこっちに戻る気がないのかも』とある程度覚悟を決めていたらしい。無論あの時点では、結婚なんてまだ先の話だと思っていたようだけれど。

 母との電話の直後、姉が間に入って話してくれたこともきっと大きかった。

『こっちに帰ってこなくても、歩加はちゃんと元気にやれるよ』

 母から伝え聞いた姉の言葉が、ふっと脳裏に蘇る。
 お姉ちゃん、そんなふうに言ってくれてたんだ、と今思い出しても胸が熱くなる。間に入ってくれたことは知っていたけれど、具体的にどんな言葉で母を(なだ)めたのかまでは聞いていなかったから。

 今となっては、実家の家族たちとは、変にお見合いだなんだと打診されていた頃よりもよほど頻繁に連絡を取り合っている。
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