追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「こういうこともされたかもしれない。そもそも俺に下心があるかないか、柊木に正しく判断なんてできるか?」

 目を見開く。ただでさえ火照った頬は、節の目立つ指に撫でられてますます熱くなる。
 私の困惑に気づいていないはずはないだろうに、鵜ノ崎さんの指は離れない。ゆっくりと動く指先に耳たぶを揺らされ、上擦った息が零れる。

 いっそ目を瞑ってしまいたかったのに、できなかった。
 目を瞠って彼の所作を見つめ、そのすべてをされるがまま受け入れていた。驚きが過ぎて動けなかった。

 その間、どことなく責めるような視線で私を射抜きながら、鵜ノ崎さんは私の髪をひと房手に取った。
 そしてあろうことか、そこへ唇を寄せてくる。

「やっ……!」

 固まっていた身体が動いたのは、その直後だった。
 言葉になっていない、けれど明らかな拒絶を声に乗せながら、私は彼の手を(はた)いて身を引いていた。浅い呼吸を繰り返し、たった今私に叩かれた手を面倒そうに眺める鵜ノ崎さんを、ただじっと見つめる。

「男の前でそういう油断をするな。俺だって男なんだ」
「……それは、どういう」
「酔ってる間だけならまだしも、今もずっと油断しっぱなしじゃないか?」
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