追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 ひどく呆れの滲んだ声で告げられる。
 失望されたのかも、と苦い気持ちが胸に広がっていく。同時に、鵜ノ崎さんの唇が目に見えて不機嫌そうに歪んでいる、その理由を考える。

 やはり昨晩、私は彼を放さなかっただけではなく、明確になにかやらかしたのでは?
 だから鵜ノ崎さんはこんなにも機嫌が悪そうなのでは?

 私たちは、私のせいで、ひと晩一緒に同室で過ごしてしまっている。
 例えば、私から鵜ノ崎さんに襲いかかったりとか……あり得ない。あり得ないけれど、酔ったときの自分の素行が正常だという自信はない。

 今回に至っては記憶がまったく残っていない分、なおさらだ。

「……つまり」

 距離を取ろうと浮かせかけていた腰の動きを止め、私はおずおずと鵜ノ崎さんに視線を向け直す。

「私は昨晩、鵜ノ崎さんにセクハラをしたという理解でよろしいでしょうか」
「おい待て、どの辺が『つまり』なんだ」

 極めて真剣に切り出した私を止めるように、鵜ノ崎さんは手を前に出してみせた。
 珍しい。かなり慌てた所作だ。
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