追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「どういう発想なんだよ、今の流れで出てきた答えがそれなのか?」
「はい。酔って記憶のない自分にはなんの自信もありません」
「……いや、いい。俺の言い方が悪かった。柊木はなにもしてないよ、本当に寝てただけだ」

 白状するような口ぶりで続ける鵜ノ崎さんを見つめ、ほ、と安堵の息が漏れた。

「良かったです。いえ、それはそれでいかんともしがたい醜態ではありますが……」
「でも俺はした」

 聞き捨てならない言葉が聞こえ、撫で下ろしたばかりの胸が再び不穏に脈打つ。

「は?」
「伝わらないからもうはっきり言う。ジャケットを脱がせたのは俺だし、そのボタンも俺が外した……もっといろいろしたって言ったらどうする?」
「はっ、い、いろいろってなんですか!?」
「なにって、人には言えないようなこととか」

 途中から、からかいに似た調子を感じ取る。
 伊達にこの人と二年半も一緒に働いていない。そうしたニュアンスはなんとなく察せる。

「嘘ですね」

 鵜ノ崎さんの目を見て、私はまっすぐに答える。

「鵜ノ崎さんはそんなことをする人じゃないって、私、知ってますので」
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