独占欲に火がついた御曹司が溺愛猛追で鉄壁ガードを崩してきます
第2話 業務ならできないはずはないはずが

《1》

 ――違うんだよな。

 浴室に吸い込まれていった片想い相手の背中を、少し恨めしい気分で見送った後、ベッドから腰を上げる気力すら削がれたきり盛大な溜息が零れた。

 また失敗だ。
 これでは柊木は落ちない。
 俺はもう、何度も同じ轍を踏んでいる。

 柊木は勘違いをしない。いわゆる〝匂わせ〟もまったく察してくれない。
 夜に電話をかけても仕事の電話だと信じて疑わないし、食事に誘っても、出張の土産を彼女の分だけ奮発しても、〝もしかして私って特別なのかな〟とは考えない。絶対にそういう浮かれた発想をしない。

 さっきだってそうだ。むしろ柊木こそセクハラを訴えてもおかしくない状況で、自分が俺にセクハラをしたのではと真剣に思い悩んで……馬鹿げている。そうはならないだろ、と危うく声を荒らげるところだった。

 そういう人なのだ。
 そういう人だからこそ、俺は彼女に惹かれている。

 自分から追いかけたくなる――こんな恋は初めてだ。
 落としたい女が現れたこと、落とし方がさっぱり分からないこと、どちらも自分の人生とは無縁だと信じて疑わなかったのに。
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