追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
『なんというか、とにかく運の悪い子なんだよね』

 柊木を紹介してもらったときの恩師の言葉が脳裏をよぎる。
 秘書から立て続けに辞められて困っていた折、柊木を紹介してくれたのが大学の恩師だった。

 彼のお墨つきなら、と諸々を飛ばして最初から面接の予定を組んだ。
 そしてオンラインで初めて顔を合わせたとき、あ、あの子だ、と思い出した。大学時代、女癖の悪さで悪目立ちしていた男に、公衆の面前でひどい目に遭わされていた子だ、と。

 あの現場は、赤の他人だとしても、とても見ていられるものではなかった。
 酒巻は当時の知人の後輩だ。柊木を相手にするよりも前に、やはり似たことをしでかしていた。同じように女の子を使って、別の女の子に別れ話を切り出して……そういう性質(たち)の悪い遊びを繰り返していた奴だ。

『運の悪い子なんだよね』

 恩師の言葉が急速に信憑性を増して、ああ、当時の話は振らないほうがいいな、と判断した。
 知らないふりをしていたほうが良さそうだと思ったのだ。下手に『覚えてるよ』などと伝えたら、その瞬間に入社の意思を撤回されそうだったから。
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