追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 採用して二年半、彼女も俺も、当時の話題を一切口にしていない。
 おそらく俺は柊木に、彼女のことを覚えていないと思われている。

 自分のあの判断は正解だった。今でもそう思う。だが、燻りが残り続けている。
 柊木の傷を打ち明けてはもらえない、踏み入らせてもらえていない、それを嫌だと思ってしまいそうになる。そういう身勝手な燻りは日に日に育っていき、今ではすっかりこのざまだ。

 柊木の入社以来、業務効率は飛躍的に上がった。

 それまでの俺は、秘書にだけはなかなか恵まれなかった。特に、会社を立ち上げた当時の秘書が辞めてからは本当にさんざんだった。
 不真面目な人間、取引先のスタッフに嫌がらせをする人間、俺に対して嫉妬を抱える人間、妙な色目を使ってくる人間。どれだけ優秀でも合わない人間がいるとは理解しているが、それ以前のモラルの問題だ。

 そんな中、柊木はやっと出会えた貴重な人材だ。

 自ら足を動かしたい性分だから、なかなか社内に留まっていられない。そんな俺に歩幅を合わせてくれる柊木は、外出も出張同行も、急な残業すら厭わない。
 会議、打ち合わせ、商談、出張、どんな状況でもそのときそのときで最良の選択をしてサポートについてくれる。真面目で献身的で、それでいて俺がミスしている場合の指摘も怖気づかずにしっかり伝えてくれる。
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