追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 やばい。めちゃめちゃ働きやすい。
 もうこの人なしじゃ生きてけないかも。一生俺の隣にいてほしいかも。

 そういう気持ちが明確に別の感情に変わったのは、彼女の入社から半年が経った頃だ。

 今からおよそ二年前、ある商談に同行してもらった後、声をかけて食事に誘った。業務に不満がないか、ヒアリングを行いたかった。
 ハードなスケジュールで働かせているが問題はないか、プライベートの時間を圧迫してはいないか、家族は心配していないか、柊木は地元が北のほうなんだってな、あぁこの質問は答えたくなかったら答えなくても構わないが結婚の話なんかは出てないのか――自分でも踏み込みすぎではと焦るほど、あのときはかなりの勢いで質問攻めにしてしまった。

『結婚、ですか』

 最後の質問に、無表情のままぼそりと呟いた後、柊木はふっと顔を綻ばせた。
 まるで恋でもしているような蕩けた微笑みを浮かべ、初めて見るその顔に俺は目が釘づけになって、でも。

『できるなら今の仕事と結婚したいですね』
『天職かもって思ってます。もう本当に、最高のお仕事すぎるっていうか』

 結婚したい。
 一瞬、俺に言われたのかと誤解した。
 思いきりフリーズしてしまった。
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