追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 柊木にとってなにが正解でなにが不正解なのか、さっぱり分からない。
 落としたい女に限って落とせない。勝手に落ちてくる女しか知らないから、うまい落とし方もいまいち分からない。恋愛相談と銘打ってカマをかけても無反応、それどころか親身になって助言をしてくる始末だ。

『今の仕事と結婚したいですね』

 あの隙まみれの顔はもうしないでほしい。俺以外の誰にも見せないでほしかった。
 だが、柊木が結婚したいのは俺ではなく、俺が生み出している仕事だ。ジレンマ、無力感、常にそういうものがまとわりついてくる恋は本当に初めてで、あれ以来ずっと調子が狂っている。

 先の見えない恋に溺れたきり、歳月は無為に過ぎ、今日。
 珍しく酒に呑まれてふらふらになった柊木を支えながら、男の前でこれほど無防備に酔うとは、と両手で顔を覆いたくなった。

 相手側の女社長と馬が合ったらしい。飲まされたというよりは、本人もだいぶ楽しく飲んで、いつの間にかこの状態だったようだ。
 ここまで乱されるとは珍しい。それでいてガードは相変わらず硬い……いや、違う。

 そもそも、俺は柊木にガードされてすらいない。
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