追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 紹介できるような関係にはない以上、我が家の身内は納得しない。結婚を先延ばしにするための方便だとすら解釈されかねない。

 案外、俺にはもう後がない。そういうところまで来ているのだと思う。
 柊木相手では、好意を匂わせる程度では絶対に先に進めない。だからストレートに伝えた。そのつもりだった。

 口は、緊張のわりによく回ってくれた。けれど次の瞬間には〝協力〟などという逃げ腰の言葉が飛び出してしまった。
 匂わせどころかはっきり言っても(ろく)に伝わらない柊木を相手に、果たしてあんな体裁じみた言い方で伝わったかどうか。

『例の恋バナの件ですね』
『想いを寄せている方に打診されたほうが良いのでは』

 ……まぁ伝わってないだろうな、と思う。そんな気しかしない。
 今まで仕事で越えてきたどんな山場よりも緊張していた。でも、今しかない気もしていた。この人に俺が男だと意識させるチャンスなんて、今日を逃したらきっともうない。

 伝わらなかったとしても、今日から、少しくらい意識してもらえたら。
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