追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 一体どんな女性なんだ、とどうしても関心が向いてしまう。
 どんな顔をしていて、どんな声をしていて、どんな喋り方をして、どんなふうに笑って……ちり、と胸が焦げつくような痛みを覚えてから、私ははっと我に返った。

 なんだ、今の〝ちり〟って。余計な感情すぎる。
 いけない。さっさと頭を仕事用に切り替えなければならない。

 あれから三日、無事に通常業務に戻り、無事にワーカホリックモードにも戻った。恋人係に関する指示は、まだ一度もされていない。
 業務そのものは出張前と変わらず忙しいけれど、それも含め、どこまでも普段通りだ。

「ではこちらと、あとこちらもですね、急ですみませんが本日中に……」
「承知しました。伝えておきますね」
「よろしくお願いします~!」

 社長室で電話中の鵜ノ崎さんに代わり、バックオフィス業務担当の()(ぐち)さんから書類と言伝を受け取る。

 田口さんは半年前に入社してきた男性スタッフで、私と年齢が一緒だ。
 私自身、バックオフィス業務をサポートする立場にもあり、彼とやり取りする機会は多い。人懐っこく気さくな性格をしていて、私のような仕事一辺倒の者でもかなりの話しやすさを感じる。

 田口さんがフロアを出ていって間もなく、鵜ノ崎さんが使用している電話回線のランプが消えた。
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