追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
     *


『ただし、今日は玄関先で失礼しますね』

 通話の最後、はっきりと言い切った鵜ノ崎さんの声を思い出す。
 要は私に必要以上の負担をかけたくない、でも恋人の話は嘘ではないと納得してもらわなければならない、とお考えのようだ。お父様の住まい、すなわち鵜ノ崎さんの実家へ移動する間、彼が運転する車の中で、あらかじめ簡単な打ち合わせを済ませておいた。

 鵜ノ崎さんの実家は、玄関だけでも私のアパートのワンルームくらいの広さがあった。
 あまりにも私の知らない世界で、仰け反りそうになったところをなんとか堪えた。

 ――そして、今。

「いや~どうもどうもどうも、急に来てもらっちゃって悪いねェ~!」

 豪邸の玄関先に現れたのは、着流し姿の初老の男性だった。
 開口一番、予想を上回る陽気さで話しかけられ、うっかり固まってしまう。

 この方が鵜ノ崎グループの会長で、鵜ノ崎さんのお父様……気圧される。

 鵜ノ崎さんにはあまり似ていない。鵜ノ崎さんよりもずっと強面で、長身と恰幅の良さも相まって威圧感がある。それでいてこのフレンドリーな態度だから、余計に緊張を煽られる。
 どういう切り込み方が望ましいのか、不安を掻き立てられて息苦しい。
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