追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「柊木歩加さんです。歩加、父だ」
端的な紹介の途中、急に下の名前で呼ばれ、喉が派手に震える。呼ぶなら呼ぶと事前に教えておいてほしかった。キラーパスをなんとか受け止め、私はお父様へ向き直る。
この窮地、なんとしても乗り切らなければならない。口角を上げてオンモード時の微笑みを浮かべ、私はゆっくりと腰を折ってお辞儀をする。
これは仕事だ、という意識は、それだけで私を強くしてくれる。
「はじめまして。柊木歩加と申します」
退勤後、鵜ノ崎さんの車でまっすぐここへ向かってきた私たちは、スーツ姿のままだ。
玄関先でのご挨拶のみで恐縮です、しかもこのような格好で、お父様のお話はかねてより伺っております――喋りながら、私はほっと胸を撫で下ろしていた。仕事だと割り切ったからか、口は存外よく回ってくれた。
お父様も終始笑みを崩さずにいてくれて、第一印象はおおむね問題なくクリアできたのではないかと淡い期待が広がる。
「他の家族はあいにく出かけていてね。本当に玄関先だけでいいのかい? 上がっていってもらっても」
「そちらの希望に合わせて無理を言ってついてきてもらってたんです、気を遣ってください」
「ああ、そりゃそうか。すまないねェ歩加さん」
端的な紹介の途中、急に下の名前で呼ばれ、喉が派手に震える。呼ぶなら呼ぶと事前に教えておいてほしかった。キラーパスをなんとか受け止め、私はお父様へ向き直る。
この窮地、なんとしても乗り切らなければならない。口角を上げてオンモード時の微笑みを浮かべ、私はゆっくりと腰を折ってお辞儀をする。
これは仕事だ、という意識は、それだけで私を強くしてくれる。
「はじめまして。柊木歩加と申します」
退勤後、鵜ノ崎さんの車でまっすぐここへ向かってきた私たちは、スーツ姿のままだ。
玄関先でのご挨拶のみで恐縮です、しかもこのような格好で、お父様のお話はかねてより伺っております――喋りながら、私はほっと胸を撫で下ろしていた。仕事だと割り切ったからか、口は存外よく回ってくれた。
お父様も終始笑みを崩さずにいてくれて、第一印象はおおむね問題なくクリアできたのではないかと淡い期待が広がる。
「他の家族はあいにく出かけていてね。本当に玄関先だけでいいのかい? 上がっていってもらっても」
「そちらの希望に合わせて無理を言ってついてきてもらってたんです、気を遣ってください」
「ああ、そりゃそうか。すまないねェ歩加さん」