追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
「それにしても、統弥がこんな素敵なお嬢さんとお付き合いしていたとはなぁ」
「ええ。僕はこの人との将来しか考えられません」

 ぐ、と喉が詰まる。
 急すぎる。全部が全部キラーパスで困る。すべてが建前だと分かっていても、かなり心臓に悪い。演技演技、これはすべて演技……と忙しない自分の心臓にしっかりと言い聞かせていたら、相槌を挟む隙を見失ってしまった。

「へぇ。初めてじゃないか、お前がそこまで言うほど女性に惚れ込むなんて」
「そうかもしれませんね」

 茶化すようなお父様の言葉に、鵜ノ崎さんは極めて淡々と返している。
 茶化され方が怖い。同時に腰をさらに強く抱き寄せられ、また追加で怖くなる。気を抜いたら最後、どこからどこまでが演技なのか分からなくなりそうだ。最初から最後まで演技だというのに。

「どうでしょう、〝存在しない恋人〟ではないと納得してもらえましたか」
「はは。まぁするしかないよねぇ」
「それは良かった。では今日のところはそろそろ……行こうか、歩加」
「はい。それでは失礼します、お邪魔いたしました」

 手を引かれたタイミングで零した返事は、無駄に上擦ってしまった。
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