追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 仕事ではないせいか、やたらギクシャクしてしまう。
 華やかな場が苦手なわけでは決してない。仕事でも、パーティーや宴席に同行する機会はそれなりにある。けれど、今日はどうにも戸惑ってしまう。

 仕事ではないから……いや、仕事では?
 恋人係としての業務の一環という気もしてくる。いや、そもそも恋人係の仕事ってなんなんだ、という気もする。

 考えることをやめ、鵜ノ崎さんと一緒に、案内された昼食の席に着いた。
 外の景色がよく見える席に通された。コースの料理を昼からご馳走になるのは久しぶりで、緊張は緊張として残りつつ、楽しみな気持ちもじわりと湧いてくる。

 間もなく、船はゆっくりと船着き場を離れ、海へと進み始めた。

「わぁ、綺麗です。晴れて良かったですね」
「そうだな」

 はしゃいだ声をあげた私に、鵜ノ崎さんの相槌が挟まる。
 船は陸を離れていき、窓越しに見える海は次第に色を濃くしていく。日差しを反射してきらめく鮮やかな水面を、私は落ち着かない気分のままじっと見つめる。

 穏やかな風の中を進む船は、揺れもほとんど感じない。
< 66 / 164 >

この作品をシェア

pagetop