追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 先輩は気まずそうな顔をしていた。
 ひどいことをしている自覚はそれなりにありそうで、けれど、私を突き放すのは彼の中で揺るぎない決定事項だったらしい。

『放せよ。しつこいって、お前』

 その言葉がとどめになった。
 またそれだ、と過去の恋の失敗がよぎって、余計に目の前が真っ暗になった。

 手が先輩の腕から離れ、力なく空を切って落ちて、私のその反応を見届けてからふたりは食堂を立ち去った。

 後には、その場に膝から崩れ落ちた私が残っただけ。
 つまるところ、大勢の人目がある場所で、私は『恋人にしつこく縋る面倒な悪女』の烙印を押されてしまったというわけだ。

 酒巻先輩とは、私が入学して間もない頃、向こうから声をかけてきたのがきっかけで知り合った。彼にひと目惚れした私が追って追って追いかけて、半年かけてやっと彼女にしてもらった。
 それからひと月も経たないうちに起きたのが、あの食堂での一連だ。女性との交際に元々慣れていた酒巻先輩は、私から追われる恋には早々に飽きたらしかった。
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