追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 まずい。
 私、鵜ノ崎さんのこと、恋だとは思っていなかっただけで元々だいぶ好きだったかもしれない。

 どうしたら追いかけずに済む?
 どうしたら嫌われずに済む?
 恋に落ちたら、私の頭はそれだけでいっぱいになってしまうのに。

 ひゅう、と強めの風に吹かれ、髪がふわりと宙を舞う。
 咄嗟に頭を押さえた私の手を、鵜ノ崎さんの指が当然とばかりに取る。

「風、強くなってきたな。戻ろうか」
「は、はい……」

 船室に戻る途中、触れ合う指の先までどくどくと脈打っている気がして、もう駄目かもしれないと思う。

『恋人なのに、俺たち』

 繰り返し繰り返し、さっきの鵜ノ崎さんの言葉が頭を巡る。
 でも、鵜ノ崎さんの好きな人が私なのかもしれないとは思いたくない。

 好きになるのが、追ってしまうのが、怖い。
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