追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
《2》
数日前――柊木を連れて実家へ向かった、あの夜。
『妙な噂があるみたいだねぇ。歩加さん、だったかな? お名前』
その話題を本人の前で出さないでくれたのは、父なりの配慮だったのかもしれない。
妙な噂。なんで知ってんだよ、と舌打ちしそうになった口を、唇を噛み締めることでなんとか耐えた。
父から電話がかかってきたのは、あの日、彼女を送り届けてから自宅マンションに戻って間もなくだった。
あれから柊木と一緒に夕食へ出かけ、デートの日程や場所について話し合った。
柊木は馬鹿真面目に俺の『報酬は受け取らなきゃ駄目だ』という言葉を鵜呑みにしていて、そういうところも本当に好きだな、と浮かれてしまった。
送り届けて別れた後も、俺の頭はまだしっかり浮かれていて、けれど帰宅して間もなくスマホに表示された名前を見た瞬間、ひと息に気分が冷めた。
夕方に連絡を寄越してきておいてその日のうちに連れてこい、と言い出した時点で相当に身勝手だ。独立した息子を恋人もろとも、自分の都合のみで呼び立ててもなんら問題はないと考える、その態度が気に入らない。
不仲というほどではないが、家族、特に父のそういうところが好きではない。
『妙な噂があるみたいだねぇ。歩加さん、だったかな? お名前』
その話題を本人の前で出さないでくれたのは、父なりの配慮だったのかもしれない。
妙な噂。なんで知ってんだよ、と舌打ちしそうになった口を、唇を噛み締めることでなんとか耐えた。
父から電話がかかってきたのは、あの日、彼女を送り届けてから自宅マンションに戻って間もなくだった。
あれから柊木と一緒に夕食へ出かけ、デートの日程や場所について話し合った。
柊木は馬鹿真面目に俺の『報酬は受け取らなきゃ駄目だ』という言葉を鵜呑みにしていて、そういうところも本当に好きだな、と浮かれてしまった。
送り届けて別れた後も、俺の頭はまだしっかり浮かれていて、けれど帰宅して間もなくスマホに表示された名前を見た瞬間、ひと息に気分が冷めた。
夕方に連絡を寄越してきておいてその日のうちに連れてこい、と言い出した時点で相当に身勝手だ。独立した息子を恋人もろとも、自分の都合のみで呼び立ててもなんら問題はないと考える、その態度が気に入らない。
不仲というほどではないが、家族、特に父のそういうところが好きではない。