追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
終始気を張っていた柊木は気づいていただろうか。
玄関でやり取りしている間、俺は柊木の隣で父を睨みつけていた。余計なことを言ったら縁切りも辞さないという気持ちで、玄関から立ち去るまで、ずっと。
父は終始、こちらの視線に気圧されているように見えた。
ただそれも、どこまでが彼の演技だったのかは不明なままだ。
「知ってますよ。でもその件、彼女は被害者です」
『なんでそう言い切れる?』
「見てました。目の前で、その噂の元になった現場を」
十年前の話ですけど、と端的に事情を伝えると、父は『ほぉ』と意外そうな声をあげた。
『そんなに前から知ってる子だったのか。なんだ、十年もあの子を追いかけてるのかい、お前?』
「違います。正直、そのほうが全然良かったですけど」
電話越しに冷めた声を落としながら、苦い気分が蘇った。
知っている。見ていた。でも、柊木本人には伝えていない。あの現場を見られていたと知れば、柊木はきっと傷つく。その程度の想像は簡単につく。
悔しい。今だったら絶対に助けるのに。
うずくまる彼女に、まっすぐ手を差し伸べてみせるのに。
玄関でやり取りしている間、俺は柊木の隣で父を睨みつけていた。余計なことを言ったら縁切りも辞さないという気持ちで、玄関から立ち去るまで、ずっと。
父は終始、こちらの視線に気圧されているように見えた。
ただそれも、どこまでが彼の演技だったのかは不明なままだ。
「知ってますよ。でもその件、彼女は被害者です」
『なんでそう言い切れる?』
「見てました。目の前で、その噂の元になった現場を」
十年前の話ですけど、と端的に事情を伝えると、父は『ほぉ』と意外そうな声をあげた。
『そんなに前から知ってる子だったのか。なんだ、十年もあの子を追いかけてるのかい、お前?』
「違います。正直、そのほうが全然良かったですけど」
電話越しに冷めた声を落としながら、苦い気分が蘇った。
知っている。見ていた。でも、柊木本人には伝えていない。あの現場を見られていたと知れば、柊木はきっと傷つく。その程度の想像は簡単につく。
悔しい。今だったら絶対に助けるのに。
うずくまる彼女に、まっすぐ手を差し伸べてみせるのに。