追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 は、と小さく溜息を落としてから端末をデスクに置き、デスクトップのパソコンに意識を戻した。
 パソコンには柊木の前職の情報がいくつか、それから新着のメールが数件。それぞれの内容をざっと確認した後、手元の資料を指でなぞる。

 姫田という女の、顔写真つきのプロフィールだ。

 十年前のあの現場に、酒巻と一緒にいた女の顔は、残念ながらまったく記憶に残っていない。だが、間違いなくこの女だ。最終学歴に記載されている大学名も一致している。
 姫田は、柊木が勤めていた会社――(きた)()()(さん)(ぎょう)社に、柊木の退職前に中途入社している。配属部署は、人事部所属だった柊木とはさして深い関わりのなさそうな営業部だ。

 姫田の入社後、柊木以外にも三人の女性社員、それも皆二十代のスタッフが、半端な時期に、それも立て続けに退職している。従業員数の多い企業ではあるが、本社のみの人員で、それも若い女性の退職が何名も続くのはいささか不自然だ。
 嫌がらせがうまいのかな、という想像は現状では偏見でしかないが、学生時代から性格の悪さはそれなりに囁かれていたようだ。幸い、自分の個人情報を守るのは大して得意ではないらしい。
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