追う恋はもうしたくない恋愛弱者の私、釣り合うはずのない敏腕ハイスペ社長に追われています
 新しいメールが届く。すかさず内容を確認する。
 悪い情報は、裏で密やかにやり取りされるものだ。取引先の取引先の取引先、そのくらいまでなら大した負担もなく追える。

 私用の調査だ。ひとりで勝手に追っている。利益が生じることもないし、むしろ時間ばかりかかって負担が増えるだけ。別に柊木が望んでいるわけでもなんでもないのに、どうして自分からこんな面倒ごとを被っているんだろう。

 決まっている。
 単に、俺が気に入らないだけだ。

「よくやる……」

 とにかく行儀の悪い女だ。
 調べれば調べるほど、素行のひどさに引かずにはいられなくなる。
 上役三名と同僚二名、社内の五名と同時不倫はさすがにえげつない。狙ったように全員既婚者なのも本人の嗜好なのか。人のものだからこそ奪いたくなる人間は一定数存在するが、明らかに度が過ぎている。

 暴露されれば、それこそ関わりのある全員が一瞬で晒し首になりそうな情報を前に、ただただ唖然とする。本来は柊木の退職に関連するトラブルを調べたかったのだが、とんでもない爆弾を掘り起こしてしまった。
 やるならもっと気をつけてやれよ、と当事者全員に呆れながら、情報の提供者への返信メールを送信した。
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