野いちご源氏物語 五一 浮舟(うきふね)
(みや)様は「(うらな)いによって二日間謹慎(きんしん)中」ということになっているので、翌日もゆっくりとお過ごしになる。
お互いのご愛情はどんどん深まっていく。

山荘(さんそう)に残った右近(うこん)は、他の女房たちにそれらしい(うそ)をついて、女君(おんなぎみ)の着物を送った。
浮舟(うきふね)(きみ)は乱れた(かみ)をとかせ、華やかな着物に着替える。
右近は、適当な格好でお(とも)をした侍従(じじゅう)のために、あらたまった着物も入れてくれていた。
()」といって、女房(にょうぼう)が主人の前に出るとき(こし)の後ろに着けるものよ。
侍従が宮様のところに上がると、宮様はその裳を(はず)させて、女君に着けさせなさる。
浮舟の君は女房風の格好になった。

宮様はそのまま女君に洗面のお手伝いをさせなさる。
姉君(あねぎみ)(おんな)(いち)(みや)様にこの人を差し上げたら、かわいらしい女房だとおよろこびになるだろう。姉君のところには高い身分出身の女房が多いが、これほどの美人はいない>
どれほど情熱的にお愛しになっても、やはり宮様も(かおる)(きみ)と同じね。
地方長官の継娘(ままむすめ)として育った浮舟の君を、お心のどこかで見下していらっしゃる。

中君(なかのきみ)夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の姫君(ひめぎみ)のような、立派な奥様たちがお相手ではできない悪ふざけがある。
そういうお(たわむ)れを浮舟の君にはなさって、夜までお過ごしになった。
「すぐにこっそり都に呼ぶから、それまで薫の君には会わないでおくれ」
とんでもないことを宮様がおっしゃるから、浮舟の君は何も言えず、苦しい涙を流す。
<目の前に私がいても、気持ちは移らないのか>
宮様もお胸が痛い。

(うら)んだり泣いたりしてから、深夜に女君を連れて山荘にお帰りになった。
行きと同じように、宮様は女君を()きかかえてご移動なさる。
「あなたが深く愛している薫の君は、こんなことはしてくれないでしょう」
宮様がささやかれたので、浮舟の君は<たしかに>と思って素直にうなずく。
それがまたかわいらしい。

山荘では右近が待ちかねていて、他の女房たちに気づかれないように戸を開けた。
浮舟の君を右近に(まか)せると、宮様はそのままお帰りにならなければいけない。
<まだまだ物足りない>
とお思いになる。
< 15 / 42 >

この作品をシェア

pagetop