野いちご源氏物語 五一 浮舟(うきふね)
(かおる)(きみ)からのお手紙がいつもより頻繁(ひんぱん)になっている。
浮舟(うきふね)(きみ)があれこれ思い悩んでいると、また届いた。
「あなたが他の男になびいているとは知らなかった。一途(いちず)に待ってくれていると思っていたのに。私を世間の笑い者になさいますな」
とあるので、女君(おんなぎみ)はびっくりする。
浮気を(みと)め、恋の()()きのようなお返事をするわけにもいかない。
もしかしたら何か勘違いをなさっている可能性もあるのだから、話がややこしくなるわ。

結局、お手紙は元どおりに包んで、送りかえすことにした。
宛先(あてさき)違いのようでございますので。あいかわらずなぜか具合が悪く、何も申し上げられません」
と書き()える。
薫の君は戻ってきたお手紙をご覧になって、
<うまくかわしたな。これまでこんな機転(きてん)()かなかったのに>
微笑(ほほえ)みなさる。
やはり(にく)みきることはおできにならないようね。
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