ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜

営業部の王子様

お昼休憩が終わった、午後の営業企画部。

私は自席で資料を整理しながら、
頭の片隅では、今夜の予定のことを考えていた。

――今日は、久しぶりの旭との食事。

それだけで、不思議と、キーボードを打つ指先が軽い。
面倒な数値チェックも、修正依頼も、いつもより少しだけ楽しく感じる。

……とはいえ。

その前に、どうしても気が重くなる予定がひとつあった。

営業部と営業企画部の合同定例報告会議。

定期的に行われるこの会議は、
数字と進捗と課題を容赦なく突きつけられる、緊張感のある時間だ。

私たちの会社は、企業向けのITサービスを扱う上場企業。
「会社の仕事を、もっと楽に、もっと効率よくする仕組み」を提供している。

営業の進捗管理。
売上や契約状況の見える化。
属人化しがちな業務を、誰でも同じ水準で回せるようにするシステム。

それを売るために、
私たち、営業企画部が戦略を立て、資料を作り、数字を読み解く。
営業部は、それを武器に現場へ出て、顧客と向き合い、契約を取ってくる。

役割は違うけれど、
どちらが欠けても仕事は回らない。

だからこの定例会議は、
建前上は「情報共有」だけれど、
実際は、お互いの力量が静かに測られる場でもあった。

(なんか、あのピリピリした空気感、ちょっと苦手なんだよね…)

そう思いながら廊下を進む。
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