ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜
会議室には、先に営業企画部のメンバーが揃う。

資料を広げ、ノートパソコンを開き、
開始時刻を待っていた、そのとき。

扉が開き、ある人が入ってきた。

その瞬間、
室内の空気が、わずかに変わった。

(……あ、柳さん)

チラッと視線を向けた先にいたのは、

営業部の、柳燈璃(やなぎ とうり)。

背が高く、黒のスーツをさらりと着こなしている。
姿勢が良く、無駄のない歩き方。

少し明るめの茶色の髪。
整った顔立ち。
深いブラウンの瞳は優しげで、どこか余裕を感じさせる。

彼が入ってくるだけで、
会議室の女性社員たちの視線が一斉に集まる。

「営業部の王子様」って呼ばれるのも納得だ。

けれど、私は心の中で、ふん、と小さく笑った。

(……旭の方がかっこいい)

つい、そう思っていた。

どんなにかっこいい人が目の前に現れても、
私には旭が一番カッコよく見えた。
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