ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜
会議が進む中、

議題は、「営業の提案内容が担当者ごとにバラついており、中小企業向け商談で成約率に大きな個人差が出ている件」に移った。

会議の流れが少し変わった瞬間、柳燈璃がふっと視線を私に向ける。

「この件、柏木さんはどう思う?」

(ーーえっ!?)

周囲の空気が一瞬ざわつく。

「なんで柏木さんに振るの?」そんな目線が飛び交う。

視線が一斉に自分に向く。

(なんで…?こんな状況に…?)

突然のことに、頭の中は完全に真っ白だった。

でも、言葉をつなげなければ、
沈黙が落ち気まずい空気が流れてしまう。

そう思うと、この議題について前々から自分なりに思っていた考えが、自然と口をついた。

「私なら……まず、今までの契約データを整理します」

ちょっとだけ緊張で声は少し震えたけれど、続ける。

「どんな中小企業が、どんな説明で導入を決めたのかをまとめて、
似た顧客には、同じ提案ができるようにします」

資料を指し示しながら、

「そうすれば、営業さんの説明もブレにくくなると、思います…」

最後の方は、少しだけ声が小さくなった。

少しの沈黙が流れ——

「……なるほど」

柳さんが、ゆっくりと頷いた。
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