ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜
廊下の照明の下でも、その整った顔立ちはやっぱり目を引く。

「会議お疲れ様」

「あ……お疲れ様です」

ぺこっと軽く頭を下げると、柳さんは苦笑まじりに肩をすくめた。

「さっきは急に話振ってごめんね」

「いえ……びっくりはしましたけど」

正直な感想をそのまま返す。

すると柳さんは、少しだけ目を細めて、あの"王子様スマイル"を浮かべた。

「だよね。でもその割には、的確な答え出してて感心した」

キラキラした笑顔。
柔らかい声。
いかにも人当たりのいい先輩、という雰囲気。

「ありがとうございます……」

そう答えながらも、私はわずかに視線を泳がせた。

廊下の少し先。
すれ違うふりをしながら、明らかにこちらを見ている女性社員たち。

(……視線、痛い)

営業部の王子様に呼び止められている構図。
目立たないはずがない。

その空気に気づいたのか、柳さんはふっと距離を詰めすぎない位置で立ち止まり、私を見下ろした。
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