ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜
料理が運ばれてくると、旭は当たり前みたいな動作で取り皿を出し、唐揚げを私の前に置いた。

「熱そうだから、気をつけろ」

そう言って、今度はサラダも分けてくれる。

「ほら」

「……ありがとう」

言葉は素っ気ないのに、仕草は相変わらず優しい。
昔からずっと、そうだった。

この距離感も。この気遣いも。

何年経っても、変わらない。

(……こういうところが、ずるいんだよ。もっと好きになっちゃうから)

胸の奥が、じわっと疼いた。

ひと通り料理が揃い、他愛もない話をしながら食べ進める。
少し間が空いた頃、旭が箸を持ったまま、小さく息を吐いた。

「……あのさ、また、彼女と別れたって話したじゃん」

———来た。

私は、平常を装い、箸を止めずに頷く。

「うん」

「理由さ」

旭は、どこか乾いた笑みを浮かべた。

「『旭くんと付き合うと、なんか寂しくなる』って」

「え? なに、その理由」

「意味分かんないよな。ちゃんと一緒にいるし、連絡もするし、浮気なんてしてないのにさ」

「………」

私は、少しだけ眉間に皺を寄せ、静かに頷く。
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