ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜
その頃の私は、なぜかひとつ上の学年のリーダー格の男の子から目をつけられていた。

私がひとりになるタイミングを狙い、廊下ですれ違うたびにわざと足をかけられたり、心無い言葉を浴びせられるのが日常になっていた。

当時は怖くて、親にも相談できなかったけど、
旭だけにはそのことを少しだけ、軽い口調で話してた。

そんなある日の放課後。

日直の旭を靴箱で待っていたときだった。

「なんだこれ。ブッサイクな人形だな」

リーダー格の男の子は私の姿を見つけるなり、友達ふたりを連れ、いつものようにニヤニヤしながら私に絡んできた。

そして――ランドセルにつけたお気に入りのキーホルダーを、乱暴に引きちぎる。

「え、か、返して……!」

「じゃあ、取り返せよ」

その挑発に応えようと必死で手を伸ばすが、体格差で全く届かない。

楽しそうに笑いながら、
上級生たちはキーホルダーを投げ合う。

その拍子に、肩を突き飛ばされた。

「……っ!」

バランスを崩し、そのまま尻餅をつく。
じん、と鈍い痛みが広がり、
悔しさと怖さで、視界が滲んだ。

「返してよ……っ」

その瞬間だった。

「なにしてんだよ」

背後から冷たい声が響く。

振り返ると、そこに旭が立っていた。

「あさひ……っ」

目に涙をいっぱい溜め、名前を呼ぶ私を見た瞬間、旭の目が、鋭く細まる。

それは、怒りが、内側で黒く燃えているみたいな目だった。
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