ひとつの月とふたつの太陽〜正しくない恋のやり方〜
「……ぅっ。……っ、ごめん、ごめんなさい……」

「………」

泣きじゃくりながら必死で抵抗する上級生に、旭は拳を止める気配はない。 
 
何度も、制止の声を無視して、ただ淡々と、冷徹に拳を打ち下ろす。

「——なにしてるの!!やめなさい!!」

ようやく、騒ぎを聞きつけた先生たちが駆けつける。

その瞬間。

「あ……」

旭は、はっとしたように動きを止めた。

先生たちに取り押さえられ、上級生から引き剥がされる。
荒い息のまま、視線だけが彷徨い――そして。

私と、目が合った。

——その一瞬。

さっきまでの無表情が嘘みたいに、旭の顔が歪んだ。

苦しそうで、今にも泣き出しそうで。

旭は、ふいっと視線を逸らした。

その姿を見た瞬間、
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。
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