完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
迅の目がわずかに細まる。
「おびき出す、ということですか」
「ああ。アルティウスが本当に動いているなら、必ず尻尾を出す」
静かな沈黙が落ちた。
「……承知いたしました」
迅が一礼した。
「では、こちらでも動きを追います」
「ああ、任せる」
ドアへ向かいかけた迅が、ふと足を止める。
「それと――」
「なんだ」
「花音様のことですが……」
一瞬、間があく。
「毎日本当に頑張っておられます」
「……それがなんだ」
「要様の本当のお気持ちを見せれば、安心するのではないでしょうか……」
迅がこんなことを言ってくるなんて珍しい。
「本当の気持ち?政略結婚にそんなものはない」
俺の顔をじっと見つめる。
「要様にとって……花音様はその程度の、感情しかないということですか?」
迅の視線がわずかに鋭くなる。
「……何が言いたい?」
「いえ、失礼しました」
それ以上何も言わず、静かに部屋を後にした。
静まり返った部屋で、俺はソファにもたれ、目を閉じた。
本当の気持ちってなんだよ……
ふと、思い出す。
あいつの顔。
不安そうに、こっちを見ていた目。
「……」
小さく舌打ちする。
守ると決めたのは、あくまで“役目”のはずだ。
それなのに――
あいつのことで、こんなにも頭を使う必要はない。
なのに……気づけば、考えている。
「……面倒だな」
ぽつりと呟く。
こんな感情になるのは初めてだった。