完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
優しいから迅さんはそう言ってくれるけど、要さんは……迷惑じゃないかな。
さっきも素っ気ない態度だった気がする。
私は思い切って口を開いた。
「あの……先ほどのことですが」
「はい」
「要さんの手の怪我が気になって……何があったのか教えていただけませんか?」
ほんの一瞬だけ、間があった。
けれどすぐに、いつもの柔らかな笑みに戻る。
「大したことではございません」
「でも……」
「ご心配には及びませんよ」
やんわりと、遮られる。
それ以上は踏み込ませない、そんな空気だった。
「……そう、ですか」
それ以上聞くことはできなかった。
志乃さんの隣にいる姿が、頭から離れない。
あの人のために、怒っていたように見えたから。
私には見せたことのない顔で。
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
要さんが誰かの為に怒っている姿が、こんなにも辛いなんて。
*
*
*
翌朝、まだ少しぼんやりした頭で、身支度を整えていると――
「おはようございます。花音様」
紬ちゃんの声がした。
「おはよう!」
「……昨日の件で、少しお伝えしたいことがございます」
「昨日の……?」