完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
でも――

昨日の光景が、頭をよぎる。

志乃さんと並んでいた姿。

思い出すと胸の奥が苦しい。

みんなから少し離れた場所まで来ると、要さんは私から手を離した。

少し残念な気持ちになってしまう。

「あの……」

思わず口を開いた。

要さんがちらりとこちらを見る。

「手の怪我の具合は……」

要さんの手に視線を落とす。

昨日、あんなに血がついていた拳は傷一つついていない。

え……要さんの血ではなかったの?

「問題ない。大丈夫だって言ったろ」

私が腑に落ちない顔をしていると。

「心配するほどのことじゃない」

少しだけ、柔らかい声になった。

「……そう、ですか」

ほっとする気持ちと、少しだけ寂しい気持ちが混ざる。

昨日の事は何一つ教えてくれないんだな……。


ボーっと考えながら歩いていたら、ぐっと腕を引かれた。

「遅い」

要さんが、私の手首を軽く引いた。

「えっ……」

「置いてくぞ」

振り返らずにそう言う。

でもその手は、さっきより少しだけ強くて。

離すつもりがないみたいに感じた。

こんなことされると、期待してしまう。

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