完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「遺書には……私を責める言葉は一つもなかった。むしろ……“信じられなくなった自分が悔しい”と書いてあった」
要さんの指が、強く握られる。
「麗子は、私を最後まで信じていた。だが……アルティウスの情報操作で心を壊された」
声が震えているようにも感じる。
「私が守りきれなかった。……あれは自殺だったが……私が殺したようなものだ」
その言葉は重く、要さんにのしかかっているだろう。
私はそっと要さんの手に触れた。
すると、ぎゅっと握り返された。
私を安心させるかのように。
「……違います」
要さんの声が、夜の庭に静かに響いた。
はっきりとした声だった。
私は、隣でその横顔を見上げる。
「母は、あなたのせいで死んだわけではありません」
真っ直ぐで、揺れていない声。
でもその指は、さっきより強く私を握っていた。
「アルティウスに心を壊された。それが事実なら、責められるべきはそこです」
胸がぎゅっとなる。
要さんは、逃げていない。
辛いはずなのに。
長い沈黙の後、低い声が落ちる。
「……麗子は、本当に優しくて強い人だった」