完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
その声音は、初めて少しだけ震えていた。

「だが……疑念を植えつけられたのが、一番の苦しみだったのだろう」

要さんの手が、わずかに強くなる。

私は、その手にそっと指を絡めた。

大丈夫ですよ、と伝えたくて。

要さんはゆっくりとお父様を見つめていた。

「……父さん」

低く、でもはっきりとした声。

「母は、きっと自分を許せなかったのでしょう。最後まで父さんを信じていたから逝ったんです」

胸が熱くなる。

要さんは、悲しい話なのに、
どこか優しく包み込むように話している。

お父様は目を閉じた。

「……あいつは幸せだったのだろうか」

その問いに、要さんは少しだけ柔らかい表情になる。

「それは……母だけしか知りません……でも、母があなたを見る時の目は……いつも優しかったのを覚えています」

要さんは続ける。

「だから……もう、自分を責めないでください」

風が、優しく頬を撫でる。

私は隣で、その横顔を見て思った。

要さんは普段、常に気を張っている表情をしている。

でも今は、落ち着いたような、すごく穏やかな顔だった。

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